関節リウマチ(未完)

関節リウマチとは?

 

 

免疫の異常により関節の腫れや痛みを起こし、そののち変形をきたす病気です。主に手足の関節で起こりますが内臓を侵すこともあります。



この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

 

 

人口の0.4~0.5%、30歳以上の人口の1%にあたる人がこの病気にかかるといわれています。どの年齢の人にも起こりますが、30歳代から50歳代で発病する人が多く認められます。また男性より女性に多く認められます(約3倍)。 15歳以下で発病するものに若年性特発性関節炎がありますが、これは成人の関節リウマチとは症状も検査所見も異なるものです。



この病気の原因はわかっているのですか?

 

 

 

 

 

完全に病気の原因がわかっているわけではありませんが、患者さんの免疫系(細菌などから体を防御するシステム)に異常があることはよく知られています。このため遺伝子の何らかの異常か、感染した微生物(ウイルスや細菌)の影響か、あるいはこの両方の組み合わせによって起こるのではないかと考えられています。この免疫系が異常に活動する結果として、関節の毛細血管が増加し血管内から関節滑膜(かつまく)組織にリンパ球、マクロファージなどの白血球がでてきます。このリンパ球やマクロファージが産生するサイトカイン(TNFα、IL-6など)と呼ばれる物質の作用により関節内に炎症反応がひきおこされ、関節の内面を覆っている滑膜細胞の増殖が起こり、痛みや腫れを起こし、関節液が増加し、軟骨・骨の破壊が進んでいきます。


疾患説明、診断


 

この病気はどのように診断しますか?

 

 

 

 

最近は治療薬の進歩により関節リウマチの進行を抑えることが可能となりました。そのため、発病してなるべく早い時期に診断して、治療を始めることがより重要になってきました。
関節リウマチの診断には、長い間1987年の米国リウマチ学会(ACR)による分類(診断)基準が使われてきました。しかし、この基準では早期の患者さんを関節リウマチと診断できないことが多く、早期診断には適していませんでした。このような状況から、2010年に米国および欧州リウマチ学会(EULAR)が合同で新しい分類(診断)基準を発表しました(表)。この基準では、少なくとも1つ以上の関節で腫れを伴う炎症(滑膜炎)がみられ、その原因として関節リウマチ以外の病気がみとめられない場合に、①症状がある関節の数、②リウマトイド因子(RF)または抗CCP抗体、③CRPまたは赤沈、④症状が続いている期間、の4項目についてのそれぞれの点数を合計し、6点以上であれば関節リウマチと診断、抗リウマチ薬による治療を開始します。日本リウマチ学会でもこの基準が検証され、早い時期での関節リウマチ診断に役立つことが示されました。ただし、関節リウマチ以外の病気でも合計6点以上になってしまうことがあるため、点数をつける前に他の疾患がないか十分に検討する必要があります。






治療方法

^_^レントゲンやエコー、採血、診察後、関節リウマチと診断してから、各種リウマチ治療薬を選択します。
感染症や副作用に留意しつつ、症状の寛解が極力得られるように治療を進めていきましょう
この病気にはどのような治療法がありますか?

 

 

関節リウマチの原因は不明なので、関節リウマチの原因をとりのぞく根治療法は今のところ期待できません。しかし、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬や生物学的製剤を積極的に使うことによって患者さんのQOLを維持し、寛解を導くことが治療の目標となってきました。 

 

  リウマチの治療の目標は、  
  (1)症状の緩和  
  (2)関節の破壊や変形を予防  
  (3)破壊された関節の働きを再建する  
  (4)身体機能の保持  
  (5)QOLの維持  
  (6)寛解を導く   
     

 

 

 

 

 

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現在はメトトレキサート(MTX)やバイオ医薬品(抗TNF製剤など)の使用により早期であればリウマチの進行を止めることが可能になりました。さらに今後新しい薬が次々と開発されていくと期待されています。

これらと炎症を抑える痛みをとる薬とを併用して関節リウマチの治療が行なわれます。

 

早期に治療しないと関節の破壊が進み、元のように回復することができなくなります。 

この期間をwindow of opportunity と呼び初めの2年間くらいと考えられています。

本格的な治療はこの中ではじめられるべきです。

このように早期の治療は重要ですが、しかしとにかく早ければよいというものでもありません。

 

関節リウマチに対する本格的な治療は関節リウマチと診断され、その活動性があり、放置すると関節の破壊が進行してしまう可能性がある場合に行なわれます。ただリウマチ反応(RF)が陽性だからとか、手がこわばるとかだけで始める必要はありません。

少なくてもどこかの関節の腫れや圧痛(押して痛い)があることが目安です。 

 

【情報更新】平成28年9月

 

 

リウマチ治療の歴史 

 

 

  関節リウマチの治療は薬物療法のない時代は温泉などの温熱療法に頼っていました。

それが金が効くことが経験的にわかってきました。
このため金を注射する治療が盛んに なり、今でも注射として(シオゾール®)行われているほか、内服薬もあります(リドーラ®)。

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ステロイドが1950年代に合成されるようになると、痛みが劇的に改善することから盛んに 使われましたが、その副作用もたくさんあることがわかり、最小量で治療するようになり ました。現在も使用されますが、メトトレキサートや生物学的製剤でも十分コントロールでき ない場合に限られるようになりました。

 

同様に痛み止めとしてのアスピリンが合成されるようになり、さらに効果のあるスリンダク (ボルタレン®)などの非ステロイド系消炎剤(NSAIDS)が盛んに使われるようになりました。

 

 

   

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しかしこれでも効果のない人に抗リウマチ薬(DMARDs)としてブシラミン(リマチル® )、 サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®)、ペニシラミン(メタルカプターゼ®)などが開発 されてきました。

 

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現在はメソトレキサート(MTX;リウマトレックス®、メトレート®)が重要な薬剤となっています。
そして21世紀になり、生物学的製剤(バイオと呼ばれます)が開発されたのです。
 
 

 

 

 

 

 

最新情報

 

Treat to Taget (T2T)とは、関節リウマチの治療を目標を定めて行おうとする世界共通のガイドラインです。オーストリアのSmolen博士により提唱され、日本国内でも竹内勤教授の尽力で関節リウマチの専門家の間に浸透しています。4つの基本原則と10のリコメンデーション(推奨方法)でできています。その内容を患者版を用いて説明しましょう。

 

 

 

 

竹内 勤:リウマチ科、46(3):297-302,2011 より引用 一部改変

Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis.2010.69:631-637 

 

 

関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医が共に決めるべきです

 

 

最も重要な治療ゴールは、長期にわたって生活の質(QOL)を良い状態に保つことです
これは、次の事によって達成できます

・痛み、炎症、こわばり、疲労のような症状をコントロールする
・関節や骨に対する損傷を起こさない
・身体機能を正常に戻し、再度、社会活動に参加出来るようにする

治療ゴールを達成するために最も重要な方法は、関節の炎症を止めることです 

明確な目標に向けて疾患活動性をコントロールする治療は、関節リウマチに最も良い結果をもたらします。それは、疾患活動性をチェックし、目標が達成されない場合に治療を見直すことによって可能となります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関節リウマチ治療目標は、まず臨床的寛解を達成することです

臨床的寛解とは、炎症によって引き起こされる疾患の症状・徴候が全くないことです

治療目標は寛解とすべきです。しかし、特に病歴の長い患者では困難な場合もあり、低疾患活動性が当面の目標となります

薬物治療の内容は、治療目標が達成されるまで少なくとも3ヵ月ごとに見直されます

疾患活動性は定期的にチェックし、記録することが大切です。中~高疾患活動性の患者では毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者では3~6ヵ月ごとに行うことが必要です

日常診療における治療方針の決定には、関節の診察を含む総合的な疾患活動性のチェック法を用いることが必要です

通常の診療で治療方針を決定する時には、疾患活動性に加えて、関節の損傷や日常生活動作がどの程度制限を受けているかも考慮します

設定した治療目標に到達した後には、関節リウマチの全経過を通じてその状態を維持し続ける必要があります

疾患活動性のチェック法や治療目標の選択には、個々の患者の状況:すなわち他の疾患があるか、患者に特有の事情があるか、薬の副作用に関する事情があるかなどを考慮する必要があります

患者は、リウマチ医の指導のもとに、「目標達成に向けた治療(T2T)」について適切に説明を受けなければなりません

 

 




線維筋痛症

線維筋痛症 

1. 線維筋痛症とは? (疾患概念・定義) 
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学)
3.この病気はどのような人に多いのですか?( 性別、年齢分布 )
4.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
5.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
6.この病気はどのような症状がおきますか?( 臨床徴候
7. 検査ではどのような異常がみられますか?
8.この病気はどのように診断しますか?(診断)
9.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療) 
10.この病気はどのような経過をたどるのですか?( 臨床経過、予後)
11. 患者支援団体などはありますか?(友の会)



1. 線維筋痛症とは?(疾患概念・定義)
 

線維筋痛症 (FM)は関節、筋肉、腱など身体の広範な部位に慢性の「痛み」と「こわばり」を主症状とし、身体の明確な部位に圧痛を認める以外、診察所見ならびに一般的な臨床検査成績に異常がなく、治療抵抗性であり、強い疲労・倦怠感、眼や口の乾燥感、不眠や抑うつ気分など多彩な身体的訴えがみられ、中年以降の女性に好発する原因不明のリウマチ類似の病気です。

線維筋痛症は新興疾患ではなく、古くから同様の病気の存在は知られており、心因性リウマチ、非関節性リウマチ、軟部組織性リウマチ、結合組織炎、あるいは結合組織炎症候群などで呼ばれていましたが、1990年アメリカリウマチ学会による病気の概念と定義、分類(診断)基準が提案され、線維筋痛症あるいは線維筋痛症候群が一般的となりました。一方、我が国では数年前までは国民のみならず医療者間でもこの病気に対する認知が極めて低いことが問題でした。しかし、最近急速にこの病気に対する認知度が医療者間で高まってきましたが、診療を避ける医師が多いことが大きな問題となっています。

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2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学)
 

アメリカでは一般人口の約2%(女性3.4%、男性0.5%)に線維筋痛症がみられるとされており、他の欧米の報告でもこの数値に近い有病患者率を示していますが、我が国での有病患者数についてはこれまでまったく不明でした。そこで、厚生労働省の線維筋痛症に関する調査研究班による住民調査によって線維筋痛症患者数は一般人口当たり1.7%、すなわち約200万人と推計され、欧米の患者数とほぼ同じであることが示されました。これは関節リウマチが我が国ではおおよそ70万人であることに比して、明らかに頻度の高い病気です。2011年我が国でインターネット調査が行われ、我が国の線維筋痛症の有病率は先の住民調査と同様に人口当たり2.1%と推計されました。しかし、この病気の治療や管理に一定のスキルが必要とされることから医療機関やリウマチの専門医を受診している患者数はわずか年間4,000名前後であり、有病者数との間に大きな乖離があることも特徴です。 


 

3.この病気はどのような人に多いのですか?( 性別、年齢分布 )
 

性差は圧倒的に女性が優位であり、わが国では男:女=1:5(欧米1:8~9)です。平均年齢は51.5±16.9(11~84)歳で、年齢とともに増加し、55~65歳代にピークを認めます。小児は全体の4.1%にみられ、12%が65歳の高齢者が占めるとされています。また、発病年齢の平均は43.8±16.3(11~77)歳です。


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4.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
 

線維筋痛症が家族内で発症することは欧米では古くから知られています。すなわち、一親等の52%(女性では71%、男性35%)に線維筋痛症類似の症状が出現し、家族内発生、家族集積性が存在するといわれていますが、明らかな直接的な遺伝的関係はないとされ、むしろ環境的な要因が重要であるとされています



5.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
 

これまでさまざまな検討が行われてきましたが、線維筋痛症の原因は現状では明らかではありません。疼痛を訴える部位(関節、筋肉、腱、内臓など)には明らかな異常が見いだせず、この病気の疼痛は帯状疱疹後の神経痛、糖尿病性神経障害時の疼痛やがん性疼痛のような神経障害性(痛み情報を伝達する神経経路の障害)疼痛であり、また脳における痛みの情報の処理に障害のある中枢性疼痛です。この病気の痛みの仕組みとして最近注目されているのは、この病気発病の素因をもった人に各種身体的、精神的ストレス反応が加わることによって、痛み刺激の伝達路(疼痛知覚神経)の過剰興奮(車のアクセルの踏み込み状態)と痛みを脳が認識した時に反応する痛みを抑える経路(下行疼痛抑制経路)の機能不全(車のブレーキが効かない状態)であり、いわば車のアクセルが踏み込まれ、ブレーキの効かない暴走状態です。したがって、治療もアクセルを戻す(痛み神経の過剰興奮を抑える)薬剤やブレーキ機能を高める(下行性疼痛抑制系の賦活)薬剤が使用されます。

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6.この病気はどのような症状がおきますか?(臨床徴候)
 

線維筋痛症の中心症状は全身の広範な慢性疼痛と身体の一定の部位の圧痛です。疼痛は身体の中心部に集中する傾向があり、全身性のこわばりをしばしば伴い、症状は朝に悪化するなど関節リウマチに類似します。また、慢性痛であっても、日差・日内変動があり、しかも激しい運動や逆に不活動、あるいは睡眠不足、情緒的ストレス、天候などの外的要因によって悪化することが多く、他の疾患に随伴する続発性の線維筋痛症では元の病気の悪化・再燃が線維筋痛症をも悪化させます。

一方、疼痛とこわばり以外に、多くの場合にさまざまな随伴症状を伴うことが知られています。すなわち、身体症状として種々の程度の疲労・倦怠感、微熱、口や眼の渇き、手指の腫れ、皮膚の循環障害(リベド症状、レイノー現象など)、寝汗、過敏性腸症候群様症状(腹痛、下痢、便秘)、動悸、呼吸苦、嚥下障害、膀胱炎様症状、体重の増減、気温への順応困難、顎関節症症状、各種アレルギー症状、心雑音(僧帽弁逸脱)、低血圧症状など、神経症状には頭痛・頭重感、四肢の感覚障害、手指ふるえ、めまい、浮遊感、耳鳴り、難聴、筋力低下、まぶしさ、みにくさなどがあり、精神症状には不眠(睡眠時無呼吸症候群を含む)、抑うつ気分、不安感、焦燥感、集中力低下、意識障害、失神発作などがあります。臨床症状のうち日本人では欧米症例に比して、口や眼の乾燥、疲労・倦怠感、抑うつ気分、頭痛、不安感の出現頻度が高く、手の腫れは低くなっています。

一方、線維筋痛症は先行する他の疾患に合併して発症することがあり、続発性(二次性)線維筋痛症といわれ、他の疾患を併発しない場合は原発性(一次性)といわれ、我が国では3:1と原発性が優位であり、続発性の基礎疾患として、リウマチ性疾患が比較的多く、関節リウマチ、変形性関節症、腰臀部痛症候群、頚肩部痛症候群などの頻度が高く、その他に全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、甲状腺機能低下症などがあります。

 

7.検査ではどのような異常がみられますか?
 

線維筋痛症は機能性の病気であることより、広く行われている通常の一般的検査で異常を認めないのがこの病気の特徴です。一方、同様の症状を呈しても明らかな検査異常を認める場合は、線維筋痛症の診断そのものが否定的です。リウマトイド因子(リウマチ反応)や抗核抗体は基本的には陰性です。しかし、他の病気に随伴する続発性線維筋痛症では、その疾患として検査異常所見が当然みられます。最近、脳画像検査に大きな進歩があり、脳の機能的MRI検査やPET-CT検査で脳内における痛みの情報を処理する部位の異常の存在が明らかにされており、今後のさらなる進歩によって、線維筋痛症の診断のための検査として用いることが出来るかも知れません。 

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8.この病気はどのように診断しますか?(診断)

 

線維筋痛症は自覚症状が多彩にもかかわらず、身体の各部位に圧痛点を認める以外、診察所見や各種検査異常を認めない機能性のリウマチ性疾患であることから、一定の約束事項を満たすかどうかで診断・分類されます。そこで、アメリカリウマチ学会が1990年に診断基準ともいうべき分類基準を提案し、その有用性から国際的に広く用いられており、わが国でも日本人を対象にしてその有用性が検証され、診断基準として用いられています。すなわち、全身的な慢性(3ヶ月以上)疼痛に加えて、少なくとも特徴的身体の部位18ヶ所のうち11ヶ所以上に圧痛点を確認することからなります(図1)。また、20年ぶりにアメリカリウマチ学会から新しい診断基準(2010年基準)が提案され、線維筋痛症の症状の組み合わせからなり、簡便なことからプライマリケア医の段階でも容易に診断ができるように工夫されています。この新しい診断基準が日本人でも使えるかの検討が現在行われています。


  

9.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療) 
 

線維筋痛症は原因不明のため、現状では残念ながら根治療法はありませんが、これまで数多くの薬物療法や非薬物療法が試みられてきました。治療原則は不必要な治療をできるだけ排除し、患者・家族に病気を理解し、受容し、睡眠の調整、適正な有酸素運動を行い、医療側・家族や周囲が患者を支援することです。

薬物療法は抗うつ薬と抗けいれん(てんかん)薬がしばしば使用される主要薬剤です。抗うつ薬は三環系抗うつ薬よりは副作用の少ないセロトニン選択的再取込阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)やノルアドレナリン作動性選択的セロトニン作動薬(NaSSA)などがもっぱら使用されます。我が国でもいくつかの抗うつ薬の治験が行われており、近い将来保険診療で用いることができます。抗うつ薬は疼痛の下行抑制系を賦活化(ブレーキ作用の強化)して痛みの緩和が期待されます。この薬剤は少量就寝時から始め、必要に応じて増量されますが、うつ病治療とは異なって、大量投与は行われません。一方、抗けいれん(てんかん)薬は従来薬ではなく、ガバペンチン(商品名ガバペン)、プレガバリン(商品名リリカ)などの新規型の抗けいれん(てんかん)薬の効果が注目されており、我が国でも2011年6月から保険適応となり薬物療法としての第一選択薬とされています。リリカ®少量も少量から漸増法で投与されます。発症早期症例の効果はかなり期待できますが、長期難治性で経過した症例では効果は限定的です。主な副作用はふらつき、めまい、眠気、だるさ、体重増加や浮腫などです。その他の抗けいれん(てんかん)薬も保険適応外ですがリリカ®が使用できない症例では処方されますが、そのなかでムズムズ脚症候群の治療薬でありガバペンチン エナカルビル(商品名レグナイト)の効果が注目されています。

一方、急性の痛みなどにしばしば使われる消炎鎮痛薬(非ステロイド抗炎症薬; NSAIDs)や副腎皮質ステロイドは無効であり、オピオイド系薬物(麻薬性、非麻薬性)も効果が限定的ですが、そのなかでトラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン(商品名トラムセット)は慢性疼痛として線維筋痛症でもしばしば使用されます。その他にわが国では線維痛症の基礎薬物療法としてワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(商品名イロトロピン)が使用されますが、単独では効果が弱く、点滴、トリガー治療として、あるいは他剤との併用が行われます。しかし、承認保険容量では不十分です。本剤も疼痛の下行抑制系の賦活作用により疼痛緩和に働くとされています。さらに、生薬である附子単独、あるいは附子を含む各種方製剤も使用されますが、前述の薬剤ほど効果に関して明確ではありません。。

一方、非薬物療法として鍼灸療法、マッサージ、リラクゼーション、ヨガ、気功などを含めた各種代替・補完医療も行われています。このなかで、科学的に有効性の確認されているのは認知行動療法と有酸素運動療法ですが、効果は薬物療法に比して弱く、また我が国では積極的に行える医療体制ではありません。

 線維筋痛症の治療目標は痛みの完全な消失でなく、痛みやその他の自覚症状の緩和をはかり、病気発症で失った生活機能の改善を目指すことです。したがって、病気の理解と受容が重要であり、治療により日常生活機能(ADL)、生活の質(QOL)の改善、向上を目指すことが目標です。

 このような観点から日本線維筋痛症学会では医療者を対象として「線維筋痛症診療ガイドライン」を作成し、我が国の線維筋痛症を取り巻く医療環境の変化を速やかにガイドラインに取り入れるために、2009,2011, 2013年と2年ごとに改定しています。

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10.この病気はどのような経過をたどるのですか?( 臨床経過、予後 )
 

線維筋痛症は基本的に生命予後にはまったく問題がなく、本症が原因での死亡例の報告はありませんが、既存疾患に併発する続発性の場合、たとえば膠原病に併発する場合、その膠原病が原因となって死亡に至ることはあります。

経過は根治療法なく、難治性であることから長期に経過し、日常生活動作能(ADL)や生活の質(QOL)は著しく低く、機能的予後が問題となります。また、長期経過例では一層、機能的予後は悪く、回復が極めて困難となるとされています。欧米では線維筋痛症は長期経過とともに自殺率が増加するための対策も治療とともにケアにあたって重要とされています。一方、小児例は比較的経過良好で大部分は1~2年以内に回復します。本邦例では84%の患者が外来通院管理下であり、1年間でわずかに1.5%のみが回復し、半数が軽快、残り約半数が不変か悪化しています。日常生活に対して半数がほとんど影響を受けませんが、残り半数が何らかの影響を受けており、約1/3が休職・休学にならざるを得ません。休職・休学の期間は平均3.2年です。


 

11. 患者支援団体などはありますか?(友の会)
 

 

我が国では医療者、国民ともに線維筋痛症に対する認知度が低いため患者は耐えがたい痛みのみならず周囲の無理解、誤解で精神的苦痛も強い状況にあるため、患者会「NPO法人線維筋痛症友の会」が組織され支援活動を行っています。また、わが国における線維筋痛症の適正な医療を推進し、原因・病態の解明、治療法の開発研究とともに専門医の育成などを目的に「日本線維筋痛症学会」が組織され、学術活動、医療者への教育活動を積極的に行っています。いずれも団体のホームページから線維筋痛症の診療可能な医療機関(線維筋痛症診療ネットワーク)が検索できます。

NPO法人線維筋痛症友の会    http://www.jfsa.or.jp/
日本線維筋痛症学会         http://jcfi.jp/ 

 

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【情報更新日】平成25年7月

 


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